娘たちが通う小学校のPTA会長を務めさせていただいたこの1年、パン工房はお休みしたものの、毎月の絵手紙講座や福祉施設での美術活動は最低限続けていましたし、放課後くらぶの指導や単発で入るお仕事もたまにあったので、やはり、それなりに忙しい日々でした。
それでも家族が日々食べるパンを焼き続けられたのは、小麦粉と水と少々の塩だけで作る「自然発酵種」があったからだと、つくづく思います。
1〜2週間に一度、種つぎ(リフレッシュメント)させる必要があったのが、パンを焼き続けられた主な理由ですが、材料をシンプルにすることで安心して食べられること、またいろいろなおかずと合わせられるというのも大きかったと思います。
ご飯を毎日食べても飽きないように、毎日食べても飽きないパン。
具体的には、リフレッシュメントするときに余る生地で、必ずといっていいほど焼いて冷凍しておくピザクラフトやピタパン。また、リフレッシュメント直後の元気な種を使って焼くカンパーニュと食パンを、この一年よく作りました。
忙しい朝など、子どもたちが早く食べられるよう、野菜とたんぱく質を一度に取れるサンドイッチやホットドッグにアレンジして。
というわけでパン工房では、今後はしばらく自然発酵種で作るパンを中心にご紹介していく予定です。お持ち帰り生地も、もちろん我が家の愛しい自然発酵種ですよ。
以前もやりましたが、「よく分からない」「長続きしなかった」というお声がちらほら聞こえたので、今回は自然発酵種が各ご家庭で代々伝わるぬか床のような存在になることをめざし、種つぎ方法をはじめじっくり詳しくご説明したいと思っています。
※5月末から7月までの教室では、カンパーニュと食パンは2次発酵と焼成に時間がかかるため焼きませんが、秋からの教室メニューには取り入れたいと思っています。
さて、今日は自然発酵種ができるまでの話を少し。。。
今でこそ私の大切な相棒に育ってくれたパン種ですが、空気中の野生酵母がパン生地の中で生命活動を開始するまで、最初はかなり大変でした。
イースト菌などを全く入れずに、粉と水だけでこねた小麦粉だんごが発酵するのを、ただひたすら待ち、種つぎを繰り返す日々。結構、孤独というか不安で一杯です。
種継ぎは基本的に、種量に対して倍量の小麦粉でこねていくので、だんだんものすごい量の生地になります。それを捨てるのはもったいないので、私も家族も酸っぱいパンを食べ続けました。
「天然酵母だから酸っぱくて固いのか? いやいや、そんなことはないはず! 私の尊敬する林弘子さんの著書にはそんなことは書いていない!」と自問自答しながら。。。
今考えると最初は発酵しているのかしていないのかも分からないような手応えしかなかったのですが、「この小麦粉だんごは生きている!これは微妙だけど確かに発酵している!」と信じることができたのは不思議です。
そうこうするうちに1〜2ヶ月が経ち、徐々に「小麦粉だんご」が「パン生地」らしくなって、3ヶ月くらいで「よし!種が完成した!」と思えるようになりました。完成したと思った日から数年経った今も、自然発酵種を使ったパンを焼く度に新しい発見があります。
↑この子が我が家の大切な自然発酵種。いつも冷蔵庫の野菜室に入っています。
自然発酵種のパンは、どっしり存在感あるカンパーニュが一番合うと思っていたけど、ふんわり軽い口当たりの食パンも焼けるし、子どもウケする総菜パンや菓子パンももちろん作れるのです。その度に、すごいな〜やるな〜可愛いな〜と私の自然発酵種を誇りに思っています(親バカでしょうか)。
↑パン工房再開メニューを考えていた時の試作。久しぶりに玄米ご飯を生地に混ぜ込んだ玄米ご飯パンなども焼いてみました。天板サイズの大きなポケットパンもできてしまった。。。
とはいえ、猛烈に忙しい時期は、自然発酵種でパンを作る暇すらないわけで、市販のドライイーストや、混ぜて焼くだけのクイックブレッドを作ることもありますが、それはそれで美味しいと家族には好評ですし、短時間で手軽にできるので、改めてドライイーストやBP(ベーキングパウダー)ってすごいな〜賢いな〜と感心してしまいます。
私の場合、絶対に天然酵母&国産小麦でないとダメッ許せない! というようなこだわりは一切ないので、自然発酵種を使ったパン作りをベースにしながらも、今後もいろいろなパン作りをしていけたらいいなと考えています。
そうそう、ドライレーズンをはじめ、生の果物やハーブ等で仕込んだ自家製酵母パンも、美味しいし、季節を感じられるし、何より発酵の過程を理科の実験のように五感を使って味わえるところが好きなので、ご希望があればパン工房でも今後やっていきたいと思っています。
「食べること」は「生きること」。
自分はどのように生きたいか? を考えると「自分は何を食べたいか?」にたどり着くような気がします。
「食」を通して、自分自身と向き合い、また新たな出会いも生まれることに感謝しています。
皆さんにお会いできることを楽しみに。